ネオテニー・ジャペァーン。

札幌芸術の森美術館で行われている展覧会「ネオテニー・ジャパン」に行ってきました。
現代美術のコレクターである精神科医高橋龍太郎氏の所蔵品、絵画・立体・映像・インストレーションなどを、一挙に約80点展示したものです。
「現代美術」という大きなくくりですので、なかなかカオスな世界でした。


とにかく面白いなぁと思ったのは、山口晃さん。
古典的な大和絵の形式を取り入れつつ、題材が「今様遊楽圖」……温泉施設だったりします。
チョンマゲを結った町人たちが、風呂や座敷でくつろいでいる横で、子供連れのサラリーマンが歩いていたり、屋根の上にパラボラアンテナが立っていたり、奥の方に駐車場があったり、裏の方ではお湯に温泉の素を入れていたりします。バーコード頭をなびかせながら、温泉卓球に励むオジサマなどもいらっしゃいました。
他の絵では、馬型のバイクに跨った武士の絵や、武者型アンドロイドの掛け軸などがありました。
緻密で圧倒的な画力と、シニカルなセンスが光っていましたね!!
東京方面では、日本橋の三越六本木ヒルズなどの広告で有名な方だそうです。


もう一人、「名前を覚えておかねば!」と思ったのが、「池田学」さん。
「領域」という作品が展示されていたのですが、このペン画がもう、「圧倒」の一言。
小さな島かと思えば、実は、巨大な蟹の絵だったりします。
よく見ると、目があったりハサミがあったり、船が沈没していたり、小さな魚がいっぱい泳いでいたり……と、とにかくものすごい書き込みです……。
ぜひ他の作品も見たいです!!
もし、運良く展示会が近くで開催されたならば、ルーペ持参で行こう!!


色々と見て思ったのは、「私は、繊細かつ面白い絵が好きなんだなー」という事。
自分には決して描けないタイプの絵です。
実は、どちらかという印象派などの暖かな色や渋い色が好きで、写実的な絵や実験作品のような斬新なものが趣味ではなく、現代アートに興味がなかったのですが、「じっくり見てる人を笑わせたい・驚かせたい」というのは、何とも「現代的」な感性だな……と思ったのでした。
ウォーリーを探せ」も立派なアートですよね。


繊細さといえば、「青山悟」さんの、刺繍で描かれた「校庭(西)」「校庭(東)」という作品も驚きました。
びっしりと糸で埋め尽くされた校庭の景色が、すばらしかったです。白線や足跡が、細かい糸により表現されていました。
写実的な刺繍というと、中国の伝統刺繍に近いのかもしれませんね。
でも、それで描く題材が非常に日本人的といいますか、哀愁漂う感じで良かったです。
「刺繍=女性」という印象が強いので、男性アーティストという事にも少々驚きました。でも、女性はどちらかというと絵画的に多少デフォルメしているものを好む傾向があるので、納得でもあります。


今回の展覧会で、現代アートの楽しさがわかった気がします。
何と言っても、「新作を待つ楽しみ」がありますよね!