蓮丈那智フィールドファイルII・III

触身仏 蓮丈那智フィールドファイル? (新潮文庫)

触身仏 蓮丈那智フィールドファイル? (新潮文庫)

蓮丈那智シリーズの2冊目。
「教務部の狐目の担当者」が、実は那智となじみのある人物だという事が解明します。


『秘供養(ひくよう)』
風化しかかった、供養の五百羅漢。そのレポートを提出した学生が、焼死体で発見される。
レポートと死体の関係は。そして、五百羅漢に秘められた「忘れがたく忌まわしい、消したい記憶」とは。


『大黒闇(だいこくやみ)』
カルト宗教サークルが大学に発足した。
そこに出入りしている学生と、仏像を提供していた骨董屋が死亡する事件が起きる。
――神々はなにゆえに変貌するのか。


『死満瓊(しのみつるたま)』
蓮丈那智が行方知れずになり、1通だけ届いたメールには、こう書かれていた。
『煙草をやめることにしたから、灰皿を片づけておいて』
その2日後、睡眠薬で眠らされた那智は発見される。男性の遺体と共に。


『触身仏(しょくしんぶつ)』
とある山頂に変わった塞の神が祀られており、それは、即神仏なのだという。
しかし、その塞の神には不審な点がいくつかあった……。
そのうちに、その祠の紹介者が行方不明になる。


『御蔭講(おかげこう)』
助手の内藤は、那智から「御蔭講」についての論文を書くように言われる。「わらしべ長者」の類型に隠された「意味」とは。
時を同じくして、研究室に新たな助手・佐江由美子が加入する。その裏には事情があって……。


写楽・考 蓮丈那智フィールドファイルIII (新潮文庫)

写楽・考 蓮丈那智フィールドファイルIII (新潮文庫)


蓮丈那智シリーズの3冊目。
2冊目の最後でやむを得ない事情で移動してきた助手が、そのまま3人目の仲間になります。
「調査→事件発生→謎解明」というパターンものではありますが、少しずつ人間模様が変わっていくのが面白いですね。


『憑代忌(よりしろき)』
助手の内藤の写真をお守りにすると、蓮丈那智の単位が貰えるというおまじないが流行する。
そのうち、おまじないは変質し、写真に嫌がらせをされるように……。
そんな中、火村家に伝わる「御守り様」と呼ばれる人形を調査に訪れ、またもや殺人事件に遭遇する。


『湖底祀(みなそこのまつり)』
丸くもないのに「円湖」という名の湖があった。
湖の底から鳥居が発見された。それが、その名の由来だと言う。
しかし、蓮丈チームはその事実に隠された、もう一つの事件を暴く。


『棄神祭(きじんさい)』
蓮丈那智と、教務部の狐目の担当者が、共に修士課程にいた頃、三年に一度、家護の神像を燃やすという奇妙な祭祀のある御厨家で、殺人事件が起きた。
そして、再び今。御厨家で事件が再現される。


写楽・考(しゃらくこう)』
学会誌に、「仮想民俗学」についての論文が掲載された。
その作者と同姓同名の資産家が、行方不明になる。そして、彼の秘蔵の絵が紛失する。
犯人は、「論文の本当の作者である蓮丈那智」ではないかと、警察は捜査に乗り出すのだった。


以前に書かれた説に連なる話なども出てきて、なかなか興味深いです。
写楽・考』は、狐目の担当者がいっぱい出てきたり、冬狐堂シリーズの主役が再出演したりで、短編ながら盛りだくさんの内容に。
写楽がどこで絡んでくるのかというのが、面白かったですね。