ふたたびの虹。

ふたたびの虹 (祥伝社文庫)

ふたたびの虹 (祥伝社文庫)


京風のおばんざいを出す小料理屋「ばんざい屋」の女将の過去と、常連客が巻き込まれる事件とを並列して語る連作小説です。
女将の過去の話は重いのですが、読み終わった後に暖かい気持ちになれる小説です。
それに、何より食事が美味しそう!
もしこういう店があったら、ひいきにしますよ、私は。


『聖夜の憂鬱』
クリスマスが嫌いな女性の常連客は、クリスマスの日に父親を事故で亡くし、それも愛人宅から帰る途中だった。
しかし、女将はもう1つの可能性を見つけ、古道具屋の清水に「あるもの」を注文する――。


『桜夢』
常連客の祖母が作ったという「緑の桜の花の下で見た夢は、正夢になる」というお話を元に、緑の桜を見つけて、花見をしようという話になる。
しかし、女将は翌日の夕刊に、その場にいた客の一人が殺されるという記事を見つける。その犯人は……。


『愛で殺して』
バーで出会った作家と意気投合した古道具屋の清水と女将。その作家のフィアンセは、偶然にも、女将の過去を知る女性だった……。
その後、作家の娘の毒殺未遂でフィアンセの彼女が疑われている事を知り、女将は彼女の潔白を晴らそうとする。


『思い出ふた色』
常連客の兄夫婦が養女を迎えたという。
しかし、その娘が「パンダちゃんのお茶碗でご飯が食べたい」とごねると言う。
それは、彼女が幼くして施設に入る前の、つたない思い出らしい……。


『たんぽぽの言葉』
常連客が、幼なじみを店に連れてやってきた。明るく見えた彼女だが、実は不幸な生い立ちだという。
ところが数日後、幼なじみの彼女から、彼の元に荷物が届いた。それが示す意味とは――。


『ふたたびの虹』
女将の秘密。その隠された過去を知る者が、そして女将本人が、古道具屋の清水に真実を語る。
ささやかな愛と、悲しい顛末の物語を。


『あなたといられるなら』
女将の店に、かつて否応ナシに引き裂かれた人物と、女将の元から彼を引き裂いた人物が訪れる。
その日からようやく、女将の中で止まっていた時間が動き出したのだった。