リイド社の石川雅之単行本。

本屋で、「人斬り龍馬」「カタリベ」を見かけたので、購入してみました。
もやしもん」の作者の単行本です。
この2冊って、「もやしもん」を出版している講談社ではなく、リイド社での出版なのですね。
よくもまぁ、もやしもん1巻の帯にでかでかと広告を載せていたな、と。もちろん、リイド社側の帯にも、もやしもんの広告がありますけど。
……と思ったら、どちらも初出は講談社の雑誌だったみたいです。
なるほど。出版されなかったり、再刷がかからなかった単行本などを、他社で出すというのは、時々見かけますね、確かに。


そういや、最近は少年サンデーと少年マガジンが、共同の記念イベントを大々的に行っていますよね。
作品の中でも、他社の作品のパロディが堂々と行われていたりもします。
いつ頃から、出版社同士のしがらみやら何やら、今までは踏み越えられなかった垣根が無くなったのでしょうか。何か明確なきっかけがあるのかなぁ?
でも、そういう「面白ければ何でもいいじゃん!」って感じは、何とも日本的で良いな〜と思ってしまうのです。
「日本の漫画が好き」って人だったら、どんな国の人ともお友達になれる気がしますし!!
ちょっと大げさかもしれませんが、


オタク文化に「世界平和」の可能性を見た。


……話は大幅に明後日の方向にそれましたが、石川雅之先生の単行本の話に戻します。
もやしもんの1巻に広告があったのは、こちら。


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「史実が真実を語るとは限らない…」
これが、この本の帯の言葉です。
あの「坂本龍馬」が、実は「人斬り」?!
――という新説を打ち出した表題作を含む、4作品からなる時代短編集です。


人斬り龍馬をよく読み返してみると、実は坂本龍馬が人を斬った場面はありませんし、友に人斬りかどうかを問われた時も、「ええ噂も悪い噂も皆しょい込めェ」とか「人斬りに歴史は変えれん」などと明言は避けています。
ですから、この新説さえも、読み手によってはまた違った解釈ができるようになっているわけです。
新選組近藤勇が追いつめられていくサスペンス作品としても、とても秀逸。彼の最期の言葉に、「なるほど」と思ってしまいました。
私は坂本龍馬新選組も詳しくないのですが、幕末好きな人ならより一層楽しめると思います。


他の3作品は、十三、四の少年兵を含む奥羽同盟軍(いわゆる白虎隊)と薩長倒幕軍との凄惨な戦いを描く「二本松少年隊」、幕府の刺客の許されぬ恋を描く「とどかぬ刃」、千年の命を求めて龍退治に集まる者たち同志の闘いを描いた「神の棲む山」です。
どの作品も、圧倒的な画力によって緻密に描き込まれており、ねっとりとした濃い空気を感じる程です。


カタリベ (SPコミックス)

カタリベ (SPコミックス)

こちらは、ヤングマガジン増刊赤BUTAで連載し、休刊により打ち切りになったらしい「カタリベ」です。
作品的には、「人斬り龍馬」よりも前に描かれたものが、「もやしもん」人気により他社から単行本化された、と推察。


南北朝時代の「倭寇」や「水軍」の戦いを描いた物語ですが、史実漫画ではなく、「バハン様」と呼ばれる神に「半年生き延びる毎に1人、お前の望む死者を一人蘇らせる」と約束された少年が、死んだ100人の仲間のために生き延びてゆく――というお話です。
残念な事に、エピソードを詰め込みすぎの急ぎすぎ、しかも休刊による未完とのことで、ようやく面白くなってきた所で終わっています。残念すぎるー!
雰囲気としては、「尾田栄一郎先生のワンピース10冊分くらいをギュッと1冊にまとめて、ギャグを抜いて死人を増やした感じ」です。
ネタはしっかり作られているし、キャラクターもなかなかイイ感じなので、「もやしもん」くらいのゆるい感じで描いたら、また違った味になって面白いかもしれませんねー。


なお、「人斬り龍馬」に収録されている「神の棲む山」には、バハン様とマエカワにそっくりなキャラクターが出てきます。
額に傷がないので、マエカワは本人ではないと思いますが、世界観が繋がっているようで、なかなか興味深いです。