四十九日のレシピ

四十九日のレシピ

四十九日のレシピ

初読み作家、伊吹有喜先生の作品。
子のない女の幸せとは何かを問いかける物語です。
百合子と同じ年齢で子供がいない私は、彼女の気持ちが痛いほどわかります。
夫婦どちらかが先立った時に、良平のように生きる気力を失うのではないかと不安にもなります。


四十九日のレシピ』という題を見た時は、ただの悲劇かと敬遠していましたが、希望のあるラストには勇気を貰いました。
乙母のように、人の心に何かを遺せる女性になりたいです。
社会派ドラマの中に真偽不明の幻の小石を投げ込んだような展開も痺れました。


NHKの映像化は本当に素晴らしかった。未見の方は一見の価値有りです。


以下備忘録。ネタバレ含むので注意。


後妻の乙美が亡くなり、生きる気力を失った良平の元に、亡き前妻の娘である百合子が帰ってくる。
夫・浩之の浮気相手が妊娠したため、不妊に悩んでいた百合子は身を引く覚悟だった。


そんな二人の元に、乙美が生前に四十九日までの雑務を託した女性"井本"、そして彼女の友人の青年"ハルミ"が現れる。
二人の明るさと乙美の遺した"暮らしのレシピ"のおかげで、徐々に元気を取り戻す父娘だった。


遺言により四十九日は宴会を行う事になり、一同は生前の乙美を偲ぶ年表を作り始めるが、思った以上に空白が多かった。
しかし、その空白は四十九日に集まった人々の思い出で隙間なく埋められていく。


その最中、浩之が現れて百合子と一生暮らしたいと良平に伝える。
娘の幸せを願う良平は百合子の背中を押し、川辺で井本とも別れ、一人きりの生活へと戻る。
寂しさに押しつぶされそうな中、良平は井本とハルミの正体に思い至ったのだった。