まほろ駅前多田便利軒

最終日に駆け込みで映画を観てきました。
三浦しをん先生原作の『まほろ駅前多田便利軒』です。

まほろ駅前多田便利軒

まほろ駅前多田便利軒

文庫(映画カバー)版
まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)

まほろ駅前多田便利軒 (文春文庫)


この間、映画『高校デビュー』のあまりの酷さに悶絶したので、相当覚悟して観たのですが、こっちは良かったです。
かなり原作のままです。原作のグダグダな雰囲気がよく出ていたと思います。グダグダな雰囲気が嫌いな人には微妙かもしれません。
個人的には原作より好きでした。ぶっちゃけた話、原作のちょっとホモっぽい雰囲気っていうか、作者脳内だけでつきあってる感じが微妙に気持ち悪かったのですが、男性(監督&俳優)の脳内を経由して昇華されたことで、すごくいい感じに仕上がっていたと思います。
子供を亡くして妻と別れた多田。親から虐待を受けていたために子供が怖いが、ある理由で精子を提供して子持ちの行天。
家族との繋がり方に失敗し、自分のために生きる方法を見失った二人の男たちの、何というかどこか現実感のない話なのですが、あんな風に生きている人はいっぱいいて……。
迷いすぎて、立ち直れないままオッサン・オバハンになってる。
何となく生きていることが申し分けなさすぎて、苦しんでる。だから、誰かのために死のうとしてる。(……ように見える)
本当は何となく生きてるのが普通なのにね。
フランダースの犬」で涙しながら「あれはハッピーエンドでしょ」って言う行天は、やっぱ多田じゃなくて「ふざけんな」って言いたくなるね。「何でも持ってるくせに、持ってないふりするな」って言いたくなるよね。


瑛太さん演じる多田が軽トラのフロントガラスをバットで割られ「なんじゃこりゃー!」って叫んだ横で、松田龍平さん(故・松田優作氏の長男)演じる行天が「似てないよ……(笑)」と言うのが、じわじわきました。
これがじわじわ来る世代の人がストライクゾーンだと思います。