蓮丈那智フィールドファイルI

凶笑面 蓮丈那智フィールドファイル? (新潮文庫)

凶笑面 蓮丈那智フィールドファイル? (新潮文庫)


マイ・ベストシリーズを買いに出かけたのですが、近所の本屋には置いてなかったので、先日気に入った「蓮丈那智シリーズ」の短編集を買ってきました。
蓮丈那智は考古学助教授で、冷たい感じのする美人です。
考古学としての仮説と、現実に起こった事件、そしてその2つを結ぶ謎を解き明かすシリーズになっています。
「知的で風変わりな美人探偵役」と、それに振り回されながらも服従する「情けない主人公」という図式が、ラノベっぽい雰囲気を醸し出していますが、文章は正当派で読みやすいですし、三層構造の謎解きが考古学の疑似体験的でとても楽しいです。


以下、自分用のメモ的あらすじ。犯人やトリックには触れていません。


『鬼封会(きふうえ)』
岡山に伝わる「鬼封会」と呼ばれる儀式。その内容を映したビデオを送ってきた学生が、何者かに殺害された。その背後にある真実は?
そして、儀式の中で封じられる「鬼」とは一体何なのか。


『凶笑面(きょうしょうめん)』
長野県の庄屋であった谷山家が、悪名高い骨董屋の主人を通し、蔵に眠る面の調査を依頼してきた。その面は非常に凶々しい笑みを浮かべていた。
その調査中、当の骨董屋は蔵の中で殺される。犯人と、その動機は何なのか。そして、凶笑面の意味は?


『不帰屋(かえらずのや)』
東北のとある村にある建物について、調査の依頼があった。依頼人はそれを女を閉じこめておく「不浄の間」だと言う。
翌朝、その建物の中で、依頼人の遺体が見つかった。しかし、雪の積もった建物の周囲に、足跡は発見者のものしかなかった。
何者が、どのようにして殺したのか。そして、その建物は本当に不浄の間なのか。


『双死神(そうししん)』
だいだらぼっち伝説から製鉄民族説、さらに古事記大国主命にからむ共同研究を持ちかけられ、那智の助手である内藤三國は調査に出かける。
しかし、その裏には、「税所コレクション」と呼ばれるものが動いていた。


邪宗仏(じゃしゅうぶつ)』
聖徳太子イエス・キリストだった――。蓮丈那智はそう呟く。
その考察の裏には、腕のない仏像に関わる事件があった。大学に寄せられた仏像に関するレポートと、その裏の思惑とは。


トンデモ系の考古学話が好きな人なら、かなり面白いと思います。
TRPGが好きな人も、色々とくすぐられる話じゃないかと。
『双死神』は、ちょっと判りにくい話だなぁと思ったら、どうやら「冬狐堂シリーズ」の主人公が、ゲスト出演している話らしいです。
そのうち、そちらも読んでみる予定。


邪宗仏』は「マイ・ベスト」に掲載されていた作品。
この短編集の中では、「読みやすく、理解しやすい」作品で、仏像のビジュアル的なものも浮かびやすいですし、「聖徳太子イエス・キリスト」という冒頭の言葉も、読者に興味を抱かせて一気に読ませる力のある作品だと思いました。
なるほど、確かに1本選ぶなら「コレ」かなぁと。