花の下にて春死なむ。

花の下にて春死なむ (講談社文庫)

花の下にて春死なむ (講談社文庫)


最近ハマっている北森鴻さんの短編集です。
ビアバー・香菜里屋を舞台に、常連客を悩ませる密やかな謎を、“ヨークシャーテリアに似ている”というマスターが、あっという間に解いてしまう、安楽椅子探偵系のお話です。
謎解きもさる事ながら、4種類のアルコール度数のビールと、マスターの趣向をこらした料理がうまそうでうまそうで……。
ミステリーと料理がお好きな方なら、きっと気に入るかと思います!


「花の下にて春死なむ」
孤独死を迎えた句会の老人「片岡草魚」は、身元不明人だった。
かつて彼が言った言葉の端々を頼りに、フリーライターの七緒は、故郷に遺品を帰そうと考える……。


「家族写真」
香菜里屋で、知人にもらったという大きなホタテをごちそうされる。
その縁を聞くと、駅にある無料貸し出しの本棚の時代小説に、モノクロの家族写真が挟まっていた、という新聞記事を、マスターは取り出した。
その写真は、何かのメッセージなのか。であれば、誰に対しての?


「終の棲み家」
初の個展を開くカメラマンのポスターが、全て盗まれてしまった。
その写真は、川辺に住まう“自由生活者”を写したものだったという……。


「殺人者の赤い手」
香菜里屋の裏手で殺人事件があった。
そのマンションから逃げ出す男を目撃した小学生は、「赤い手の魔人に違いない」と言う。
赤い手の魔人とは、この近辺の小学生の間で流行っている怪談らしいのだが……。


「七皿は多すぎる」
とある回転寿司屋で、マグロだけを七皿食べて出て行った男がいると言う。
翌日も、翌々日もマグロづくし。
果たして、その行動にはどんな意味があるのだろうか。


「魚の交わり」
フリーライターの七緒が書いた「片岡草魚」の記事を読んだ人間から、「亡くなった叔母の日記に、草魚の句らしきものが書いてある」という手紙が届く。
その日記から、彼女と草魚との間にあった関係を読み解いてゆく……。