電波の城・7巻。

「2009年は、買った本を全部書く!」と思っていたのに、もはや1冊抜けてました!
1時間くらい顔を付き合わせる小説はわりと覚えているのですが、漫画に至っては息をするように読み追えてしまうので、忘れがちです。
だから、散財するのでしょう。危ない危ない。



細野不二彦先生の「電波の城です。
この漫画家さんは、何を読んでも面白いです、ほんとに。
メトロポリタンの元キュレーター(学芸員)が、贋作と闇に流通する真作を扱うという漫画「ギャラリーフェイク」がイチオシですが、この「電波の城」も面白いです。


謎の女子アナウンサー・天宮詩織(あまみや・しお)が、小さな芸能事務所を訪れ、テレビの世界へと進出していくお話です。
この天宮さんは、美しく聡明で滑舌もよく、とても落ち着いた大人の女性なのですが……
実はかなりの腹・黒!
のし上がっていくためならば、あの手この手を駆使します。
うちの旦那さまは、「けっこう気持ち悪い話だね……」と言っていました。確かに、背筋が凍るほどの裏表があります。
しかし、ふとした時に見せる天宮さんの素顔は本当に可愛らしく、繊細で、ひょんな事で壊れそうな心を持っています。
7巻では、天宮さんの過去――子供の頃に謎の宗教団体に捕らわれていたような描写が。
それがきっかけになって、天宮さんが超ウツ状態に突入しますが、そこから立ち直る姿に、感動すら覚えます。


しかし、細野さんは、壊れた人間を描くのが上手いナ……。
ボクシング漫画「太郎」でも、主人公の太郎にフラれた女の子が、心を病んで宗教団体にハマり、職場の金を横領する姿が生々しく描かれていたり、「S・O・S」という漫画では、女刑事をストーキングする男を魅力的に描いたり。


S.O.S. 1 (アクションコミックス)

S.O.S. 1 (アクションコミックス)

↑問題作。(でも好きだ)


……あれ。
そういえば、「電波の城」に出てくる天宮さんの事務所の社長さんも、「S・O・S」のストーカーも、鯨岡って名前だなー。
細野先生は、そんなに鯨が好きなのか。
それとも彼らに何か繋がりが?(いや、ないな……)


電波の城」は、ビッグコミックスピリッツで10話(単行本1冊分)掲載して、しばらく休んでからまた再開、という感じで連載しています。
現在、本誌の方では、天宮さんをバックアップしている(らしい)ご老人と鯨岡社長の馴れ初め話が掲載中。


その「ご老人」が、天宮さんとどのような繋がりがあるのか……。
現在は施設に入っている天宮さんの父親と、例の団体がどんな関わりがあるのかも、気になる所です。
女子アナウンサーとして最高位にいる本城律子を、天宮さんが敵対視している理由もいずれ明かされるのでしょうか。
そして、天宮さんに好意を寄せている記者・谷口ハジメのコメントが、「手記」として所々に挿入されるのも、非常に気になります。おそらく谷口くんは、最終的に天宮さんの素性やら性格やらを全て知り、何らかの形に残すのでしょう。
ということは、天宮さんは伝説のアナウンサーとなるのか……もしくは、記憶の中だけの人となるのか……。
う〜む。


この物語が、どのような結末に辿り着くのか、とても注目しています。