憑神と米沢さん。

憑神 (新潮文庫)

浅田次郎さんの本は、実は初めて読みました。
『鉄道員（ぽっぽや）』は映画館で見ましたけど……あの作品のイメージそのままの文体なんですね。びっくりしました。
美しくて、人情味あって、それでいて悲しくて。
エンターテイナーだな。

『憑神（つくもがみ）』は、幕末を舞台にした物語です。
下級武士ではあるものの、文武に長けた次男坊“彦四郎”が主人公です。
彼は、実力を見初められて名家に婿入りしたものの、跡取り息子が生まれた途端に、「身分が低い！」と舅に追い出され、出戻りになってしまいます。
自分の不幸を嘆き、泥酔しながら『三巡稲荷』に神頼みしたのが運の尽き。
なんと彦四郎の元に『貧乏神』がやってきます！
しかし、彦四郎の境遇に同情した貧乏神は、祟る相手を他人になすりつける『宿替え』を提案しちゃったりして。
これで一安心と思いきや、『三巡稲荷』はその名の通り『三度巡る』とのことで、彦四郎の元には次々と会いたくない神様が訪れることに……。
最後の神様が訪れた時、彦四郎は武士としての決意を固めます。
現代人から見れば、「馬鹿だなぁ」って思うんですよ。
神様たちだって、彦四郎に同情して『宿替え』を次々に勧めるのですよ。
こんなにも切ないのに、美しくも勇ましいラストシーン。
彦四郎にとっては『ハッピーエンド』であり、決して『サッドエンド』ではないのです。

相棒シリーズ 鑑識・米沢の事件簿2?知りすぎていた女? (宝島社文庫 C は 1-5 「相棒」シリーズ)

こちらは、ドラマ『相棒』のスピンオフ小説、第２弾。
スピンオフと言いつつも映画化にまでなり、『相棒』本編では亀山さんが退職しちゃっているので、気持ち的には『右京さん＋米沢さん』が、新しい『相棒』だったりします。
今作は、『ストーカー殺人』の犯人とされる警察官の妹が意義を唱え、密かに米沢さんがその真実に迫るというお話です。
最後には右京さんも現れて、颯爽と解決！
いいですねぇ、こういう展開。
『科捜研の女』が好きな人にも、鑑識繋がりで読んで欲しい作品です！