秋期限定栗きんとん事件

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件〈上〉 (創元推理文庫)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

秋期限定栗きんとん事件 下 (創元推理文庫 M よ 1-6)

小市民シリーズ3作目、今回は上下巻です。
日常の謎』系でありながら、毎度悪質な犯罪を扱っていますが、今回は放火。
ついでに言うならば、「小鳩くんと小山内さんに恋人ができた」ことも悪質。
恋人が「小市民」を目指すためのアイテムのひとつのようで不愉快でした。
犯人も恋人たちの結末も、序盤で感じた予想通り。
残ったのは不快感。
それなのに、ミステリーとして面白いのでタチが悪い。


とにかく、小山内さんが復讐を決意した理由が一番怖かったです。
彼女とつき合うと、最後には井戸に突き落とされて「仕方なかったの」と言われそう。
まあ、自分を正当化して人の揚げ足をとって責める『羊の皮を被った狼』的な女子は、実際にはたくさんいますよね。リアルなだけに怖いのです。
小鳩君もよくいる『理屈男子』。
私もわりとこのタイプです。でも、それは理屈が悪いのではなくて、気遣いが足りないだけですよね。聞かない優しさ、言わない優しさというものも世の中にはある。私にも足りていない。
れっきとした小市民の一員である彼らが、小市民を目指す姿が滑稽で、その自意識過剰による行動が怖い。
現実に最もいないタイプの堂島君が存在しているのは、作者の自虐的なメッセージのような気もしています。


余談ですが、このシリーズが図書館の児童書コーナーの片隅に移動したのを発見して軽く動揺。
確かに、ハリー・ポッターなんかより薄くて読みやすいだろうけれど、あまり子供に勧めたくないなぁ。
「反面教師」として受けとってもらえなかったらイヤだな!