獣の奏者

アニメにもなった上橋菜穂子さんのハイ・ファンタジー獣の奏者』を読みました。
ファンタジーは想像力が必要だと言いますが、私が今回読んだ青い鳥文庫版は漫画版も手がけている武本糸会さんの挿絵がたくさんあり、全ての漢字にふりがなが振ってあるので、かつて挫折した人もこちらなら読めるかも。
子供向けではありますが活字サイズは普通の小説と同じなので、カバーをかけたら人前でも恥ずかしくありません。
架空の動物を育てる少女の話ですが、人種差別や戦争など人間の業にも深く触れており、大人が読んでも考えさせられる名作です。「むさぼるように読む」という感覚を久しぶりに味わいました。

獣の奏者(1) (講談社青い鳥文庫)

獣の奏者(1) (講談社青い鳥文庫)

1巻では、まだ幼い主人公エリンが過酷な運命に晒されます。
ジョウンの仕事を手伝う下りは、アルプスの少女ハイジを彷彿とさせ、「こんな風に暮らしてみたい!」とワクワクしました。

獣の奏者(2) (講談社青い鳥文庫)

獣の奏者(2) (講談社青い鳥文庫)

2巻では、国の権力争いなど複雑な世界設定が語られているのに、するする頭に入ってくるのが不思議でした。
エリンはとうとう王獣リランと対面。リランの世話をするいきさつがとても自然で、子供が大役を受け持つというのに、何の違和感もありませんでした。
エリンの学友のユーヤンは本当にいい人で、こういう子がたくさんいたら諍いなど消えてなくなる気がします。
きっとエリンは作者・上橋さんであり、本好きな全ての少女たちの投影であり、ユーヤンは理想の友人像なのでしょうね。

獣の奏者(3) (講談社青い鳥文庫)

獣の奏者(3) (講談社青い鳥文庫)

3巻では、おそらくこの物語の中で最も衝撃的な「あのシーン」があります。
アニメ版を初めて見た回がちょうどこのシーンで、少々トラウマになっていました。
しかし、彼女がどうやってあそこから立ち直ってゆくのか見届けたくて、この可愛らしい絵柄の青い鳥文庫でトラウマを紐解いた次第。
エリンは罪を背負い、傷つきながらも生きてゆきます。胸が熱くなりました。


獣の奏者(4) (講談社青い鳥文庫)

獣の奏者(4) (講談社青い鳥文庫)

4巻。よかれと思ってやったことでも、ささやかな欲でも、それを利用しようと企む者がいれば悪にもなる。
世の中の縮図のようでした。
どんなに誠意を持って接しても、気持ちは正確に伝わらないという事実は人間の親子や友達にも当てはまることで、だからリランがエリンを救う場面は涙がこぼれそうでした。
イアルのほのかな愛情表現もよかった。
続編もあるそうなので、いつか手にしたいと思います。


文庫版。

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)

獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)

獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)


単行本。

獣の奏者 I 闘蛇編

獣の奏者 I 闘蛇編

獣の奏者 II 王獣編

獣の奏者 II 王獣編


続編。

獣の奏者 (3)探求編

獣の奏者 (3)探求編

獣の奏者 (4)完結編

獣の奏者 (4)完結編


漫画版。

獣の奏者(1) (シリウスKC)

獣の奏者(1) (シリウスKC)

獣の奏者(2) (シリウスKC)

獣の奏者(2) (シリウスKC)