月の森に、カミよ眠れ

月の森に、カミよ眠れ (偕成社文庫)

月の森に、カミよ眠れ (偕成社文庫)

獣の奏者』『精霊の守り人』シリーズの上橋菜穂子さんが1991年に手がけた物語が復刊。
あとがきによると、九州祖母山に伝わる『あかぎれ多弥太伝説』に惹かれ、オーストラリア先住民アボリジニと暮らしたことに影響を受けたそうです。
しきたりなどの描写がリアルで、まるで実話のように感じました。
大きな勢力が少数派の価値観を飲み込んでいくような事は現代日本でも日常的に続いており、これは日本という狭い土地、湿り気を帯びた日本人が持つ性質なのだろうかと思い至り、少し怖くなりました。
それでも逞しく生きていく人々の姿に心を動かされます。


今回図書館で借りてきた児童書は全て、現代社会への警鐘」のような部分が少なからずありましたね。
かといって、安易に非難するような内容ではありません。
なんといいますか……冷静な目線で見ているのだと思います。
「全ての事には必ず良い部分も悪い部分もある。安易に右にならわず、まず自分で考えよう」という感じです。
情報があふれかえる世の中ですが、子供の頃からこういった本に親しんで、広い視野で物事を考えられるような大人になってくれるといいなぁ、と思います。