卒業〜雪月花殺人ゲーム〜

卒業―雪月花殺人ゲーム

卒業―雪月花殺人ゲーム

ドラマ『新参者』が面白いので、シリーズ一作目から読むことにしました。
探偵役の加賀恭一郎は『新参者』では刑事ですが、この作品ではまだ大学生。刑事ではなく教師を目指しています。
友人がアパートで死亡しているのが発見され、高校時代からの友人たちと集まった茶道の集いで、さらなる事件が……。


どうも挿入図が出てくるだけで推理小説ファンは高揚してしまうものですね。
ただ、トリック重視のせいか、「これだけ計算高い犯人が、なぜ自分にも疑いがかかる場で殺したのか」という根本的な疑問は消えませんでした。


実は東野初期作品は苦手意識があるのですが、読んでみるとやはり苦かったです。
いや、若いのか……。
感情的な女性や名誉欲の強い人間が嫌い、というのが伝わってくる気がします。
東野さん自身に『容疑者Xの献身』の石神が重なりました。


私が考えるに、東野さんは「恋愛」や「友情」というものに対して、すごく冷めていると思う。心が通じ合うなんて妄想だってね。
「恋愛に振り回されている人」「上っ面の友情」の描写にすごく敵意を感じます。
最近の作品は「読者はこういうのが好きなんでしょ」という計算を感じてしまうんですよね。
いや、何かしらの心情の変化があったのかもしれませんが。『容疑者Xの献身』の石神が最後に号泣したようにね。
私が東野さんに苦手意識があったのは、「同族嫌悪」なのかも。
あ、話は面白かったですよ。


文庫版はこちら。

卒業 (講談社文庫)

卒業 (講談社文庫)