オーデュボンの祈り
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2000/12
- メディア: 単行本
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強盗を起こした男が気がつくと離島におり、予知をするカカシに会うという不思議な話です。
話があっちゃこっちゃに飛んで、様々な物事に説明が足らず、細切れの映画のフィルムを乱雑につなぎ合わせた印象がありました。
最後まで主人公が強盗を起こした理由がピンとこなくて、「物語の都合上」という感じ。「家に帰れない」という理由があれば良かった気がする。
江戸時代のシーンが唐突にカットインしたり、レイプだ強姦だという単語が幼稚に飛び交ったり、最終的には安易な勧善懲悪で終わったのも気持ち悪かった。悪いヤツを殺してスッキリするのは暗い喜びだわ。
「島に足りなかったもの」のオチも「あり得ない」としか言えない。
まあ、虫が脳神経の代わりとなり喋るカカシ、という前提からして既に「ミステリー」ではなく「ファンタジー」ではあるのだけれど、ならば何が描きたかったのだろうと首を捻る。
タイトルからすると、「陽気なギャングが地球を回す」を読んだ時にも感じた「人間より動物の方が大切」という持論(?)なのだろうか。上とか下とかあるんか。言葉の端々に「達観した事を言おう」というような幼さを感じて、ちょっと寒い。
ただ、それでも……面白かった、という感想。そこが自分でも一番不思議。
巻末の選評がさすが的を射ていると思いました。
「ミステリとしては多くの欠陥を孕みながら、しかし、最後まで読む手をとめさせなかった」(馳星周)
――同感。
「あまりの馬鹿馬鹿しさが各選考委員から指摘された」「けれども、この作品について議論するとき、選考委員は全員が笑っていたのであり、一番いきいきとしていた。これは、つまり、面白いということである」(奥泉光)
――なるほど。
もしかしたら、小説家より映画監督向きの才能かもしれませんね。
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- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/11/28
- メディア: 文庫
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