グラスホッパー

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伊坂幸太郎先生著、復讐を誓う「鈴木」と、殺し屋3人の物語です。
私は悪人を殺した所で何の清涼感も感じない人間なので、これは「苦手」の部類の話ですが、最後まで読ませる力はありました。
ハードボイルドのニューウェーブという所でしょうか。


何作か読んだだけで、伊坂さんが「多視点小説が好き」「自作引用が好き」「殺し屋大好き!」という事は理解。
これが「お約束」という美学となるか、「ワンパターン」となるか、興味のあるところではあります。


私が大して好きでもない流行作家の小説を読むのは、最近の思想を読む解くため、のような気がしています。
例え悪人だろうと、人が次々に惨殺される作品を読んで「爽快だった」という感想を言える人を見ると、何とも不思議……というか、ちょっと怖い気持ちになります。
「これも時勢なのだろうか」なんて事を考えながら、眉をひそめながら読む自分って、なんつーか苦行じみてるなぁ。


以下、ネタバレを激しく含む備忘録。読む予定のある人は読まないこと。


妻をひき逃げされた鈴木は、それが快楽的に行われたものと知り、犯人が『令嬢』と呼ばれる麻薬売買や臓器密売などを行う後ろ暗い会社の社長の馬鹿息子であることを突き止め、契約社員として潜入して復讐の機会をうかがう。
しかし、その目論見はすぐにばれ、逆に忠誠を誓うための人殺しを強要された鈴木だったが、その直前、妻の仇である馬鹿息子が車に轢かれて死亡し、急きょ鈴木は馬鹿息子を突き飛ばした犯人を尾行させられる。
その『押し屋』と呼ばれる殺し屋に思われた『槿(あさがお)』には暖かい家族もおり、とても殺し屋には思えなかった鈴木は『令嬢』への報告をためらう。


一方、自殺専門の『鯨』と呼ばれる殺し屋は、某国会議員秘書を自殺に追い込んでいた。議員はさらに事実を隠匿しようと、『蝉』に『鯨』の殺害を依頼するが、一足早く議員は『鯨』の力で自殺させられてしまう。
その汚名返上のため、『蝉』は『押し屋』の居場所の情報を持って『令嬢』へ売り込もうと考え、寺原(息子)の居場所を知る鈴木をかっさらうが、過去を清算しようとやってきた『鯨』と出会い、死闘が繰り広げられる。


最終的に鈴木は『槿』に救われるが、彼の目にも幻覚が見えはじめる……というラスト。
「人は群れると病む」ということだけが言いたかったのかなぁ。
毎度「人と同じことするのキラーイ」「動物の方がエラーイ」というエキスがにじみ出てきて、最終的には殺し屋でバーンな伊坂節には少し稚拙さを感じてしまうんですよね。
個人的にはもう少し建設的な解決方法ってのがあると思うのだけれど。